ワタキューセイモア株式会社

CSRレポート

特別対談:井手町とワタキューグループの今と未来を支えるために

2017.11.01

CSRレポート

ワタキューグループの歴史は、1872(明治5)年、村田久七が京都府綴喜郡井手町に村田製綿所を創設したことに始まります。井手町は、京都府南山城平野のほぼ中央、木津川右岸に位置する緑豊かな町です。ワタキューグループは、全国で事業を展開する企業に成長した今もここに本社を置いて、町の人々との交流を大切にしており、人々から親しみを込めて「ワタキューさん」と呼ばれることに誇りを持っています。
井手町で長年にわたり町の発展に尽力されてきた汐見町長にご登場いただき、弊社代表取締役社長 村田清和と、地域と企業が共存し、発展していくことについて対談していただきました。

切り離しては語れない、町とワタキューグループの発展の歴史

村田:
ワタキューグループの前身である村田製綿所が、ここ井手町で誕生してから145年になります。今のような医療関係の仕事をするようになったのは1962(昭和37)年、私が小学校3年生くらいのときですが、その後も井手町に本社を置いていますし、その敷地の中に私の自宅もあります。会社と自宅がある井手町との関係は、切っても切れない感じがします。今は取引先との関係もあって交通の便が良い京都市内に本部を置いていますが、井手町には弊社の本籍地、発祥の地ということで、特別な思いがあります。

汐見:
昔から井手町と言えばワタキュー、ワタキューと言えば井手町。京都府の開庁が1868(慶応4・明治元)年ですが、ワタキューさんはその4年後にできています。京都府とあまり変わらない歴史があるんですね。今、若い人はみんな大都市に行くし、企業も大きくなれば本社ごと東京に行ってしまいます。大きい企業の5割以上が東京へ進出していると聞いています。ワタキューグループには約9万人の社員がいるそうですが、そこまで大きくなっても創業の地を大事にしていることに感心しています。自治体の会合などで全国各地の人と話す機会がありますが、ワタキューさんは全国展開をしているので、町の説明をする際に、ワタキューさんの本社があると言うとわかってもらいやすい。この町がワタキューさんの発祥の地であることを光栄に思っています。

村田:
ありがとうございます。

汐見:
ワタキューさんは、とても家族的な雰囲気がありますね。そういうものは会社が大きくなると消えていくのではと思いますが、温かい雰囲気が残っています。おそらく町の人々もそう思っているし、働いている人たちもそうでしょう。会社に行って社員の人を見ていると、礼儀正しいし、明るい、気持ちがいい。それを見るだけでしっかりとした会社だなあと思います。

村田:
ありがたいお話です。これからもそう思っていただけるように、よりしっかりやっていきたいと思います。会社の基本方針でも「感謝の気持ち」、「謙虚な姿勢」をまず第一にしています。

汐見:
そういうことを徹底したら、社員の人たちはかえって窮屈な感じがすると思いますが、そういう様子も見えない。そうならないのはなんでだろうか、と考えます。役場の職員もそうならないといけないと思いますね。

村田:
現副会長である安道が、社長時代に、ワタキューグループ研修センター「一心館」を作りまして、社員の教育に力を入れています。特に新入社員には礼儀を一から教えています。礼儀、感謝、謙虚な姿勢は社会人としてのおつきあいの入り口ですので、重点を置いています。これがずいぶん身に付いているようです。

汐見:
人との関係を築く上では大切なことですね。

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「礼儀」と「感謝」が地域での良好な関係づくりの基本

村田:
ワタキューグループは全国に展開していますが、どこに進出するときにも地域の方々にはお世話にならなければなりません。クリーニング業は水を使います。給水も、使った後の排水もあります。こうした基準はどこも大変厳しいので、町の人、水利権や漁業権を持っている人、用水路を管理する人たちにきちんと説明し、理解していただき、了解を得ないといけません。その交渉をするときからいろいろな方にお世話になっていますので、事業を始めた後も決して迷惑をかけられません。どこへ出ていくときも、まずは地元の人たちと良好な関係を築いていきたいと思っています。

汐見:
企業は何をするにも地元の協力なしではできないというわけですね。企業と自治体は、お互い守るものは守りながら、理解してやっていくことが大事だと思います。

それにしても、これだけ大きい企業が創業の地を忘れずにいるということはなかなかできることではないと思います。先祖を大切にするというのは大事なことですが、そういう気持ちが社員にも浸透しているから、よそへ行っても地元と同じように接することができるわけですね。

それから、ワタキューさんは、環境保全活動にも力を入れていて、井手町にある大正池森林保全支援活動にも協力していただいています。

村田:
大正池での活動は、今年で10年目になります。年に2回、100人を超える社員が集まって、地域の方々と一緒になって間伐や植樹をしています。大正池は、1953(昭和28)年夏に大水害にあって、たくさんの方が亡くなられました。植樹をすれば、苗木は小さいけれどいずれ根を張って地盤を固めるので、池が崩れることを防げればという思いもあり、地域の皆さまとともに始めました。地道な活動ですが、災害防止だけでなく、地球温暖化防止など環境面でも地元のために貢献ができるのであれば続けていきたい。私もこちらへ戻ってきてからは参加しています。全体活動以外の時も、CSR推進実行委員が活動をフォローしていますので、年2回の全体活動も続けて行うことができています。

汐見:
井手町が環境のために取り組んでいるのは、CO2の削減、地球規模での大きな課題ですね。少しずつでもみんなが取り組まなくてはいけない。2009(平成21)年からすべての公共施設の蛍光灯をLEDに交換する事業を行っていますし、町内の街灯、公園や道路の照明についても、順次進めています。また、役場、学校などの屋上に太陽光パネルを設置しています。全体から言えば効果はわずかですが、地道にやっていくことが大事だと思います。

私は2003(平成15)年、3期目の選挙のときに清流やきれいな空気を守るということを公約に掲げたので、当選後に「豊かな緑と清流を守る検討委員会」を立ち上げました。全体からみると、いろいろな循環をきちんと作ることが大切ですので、さまざまな角度から井手町の自然を守っていこうと考えました。ちょうどそのころ京都モデルフォレスト協会(※)が設立されて、ワタキューさんにもいろいろ協力いただいています。こうした活動に企業が積極的に関わってくれることは、今後につながるのでありがたく思っています。

次世代に向けて、ということでは、中学生の面接マナー講習も、ワタキューさんにお願いしていますね。

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地域の課題を共有して、ともに未来を歩む

村田:
面接マナー講習は、井手町立泉ヶ丘中学校の校長先生から、やってもらえないかと言われたことがきっかけでした。最近の高校受験は面接を重視するので、礼儀やマナーをしっかり身に付けないといけないのですが、教員も数年で交代するのでなかなか継続して教えられないということでした。2012(平成24)年から採用担当社員が泉ヶ丘中学校にて講習を行っています。

汐見:
面接のマナーや礼儀は、高校受験だけではなく、社会に出ても大切なことです。次世代を担う中学生にそうしたことを教えていただくことは、大人になっても必ず役に立つと思います。

大人になると井手町から巣立っていくわけですが、井手町では、人口が1978(昭和53)年をピークに減少していまして、これを食い止めることが長年の課題になっています。結婚や就職で転出するのは仕方がないとして、それ以外では、住むところがない(宅地)、交通の便が悪い、働くところがないというのが大きな要因でありまして、これは町の努力でどうにかなるのではないかと思いました。現在では、企業誘致、住宅地の開発に力を入れています。JR奈良線の複線化や国道24号バイパスなどの整備が順調に進み、外からも人や企業が入ってくれば、将来にとっての明るい兆しになると思います。

町としてもいろいろ取り組んでいるので、ワタキューさんにも今まで以上に、地元を大事にしてもらいたいと思いますし、今やっている取り組みを引き続きやってもらえるようお願いします。環境もそうですし、少子高齢化対策ですとか福祉などの何か新しい取り組み、みんなが関心を持つようなことをお考えになる場合は、ぜひ井手町でもやってほしいですね。

村田:
弊社は今後も、この創業の地で、皆さまとともにあり続けると思います。ただ町を歩いていても子どもの姿が減っていますし、このままいったらどうなるのかと心配になります。

汐見:
いろいろなことが東京に集中しすぎることも問題だと思います。村田社長にはぜひ井手町に引き続き住んでいただきたい。このあたりはまだまだ昔の習慣やしきたりが残っていて、それが窮屈だという人もいます。だいぶ簡略化されてきてはいますが、そういう昔ながらの風習が残っているところも、この町の人たちが持っている道徳感につながっているのではないでしょうか。変えるべきところは変えていきながら、良いところは残し、受け継いでいってほしいですね。

村田:
これからも井手町や地域の皆さまとともに手を携えて、お互いに末永く発展していきたいと思います。

(※)京都モデルフォレスト協会:モデルフォレスト運動を推進する日本で初めての団体として2006(平成18)年に発足。森林から恵みを受けるすべての府民の参画と協働により、府民共有の貴重な財産である京都の森林を守り育てるためにさまざまな取り組みを行う。

CSRレポート井手町長 汐見 明男 様

1995年8月から井手町長(現職)、同年8月より木津川右岸宇治木津線道路新設促進協議会会長(現在)。1997年12月からJR奈良線複線化促進協議会会長(現在)、2006年1月から京都府町村会長(現在)、同年7月から京都府道路協会会長(現在)、2017年7月から全国町村会政務調査会財政委員会委員長(現在)。


CSRレポート代表取締役社長 村田 清和

1976年3月 綿久寝具株式会社(現ワタキューセイモア株式会社)入社。1981年9月同社取締役就任。1997年8月ワタキューセイモア株式会社取締役副社長、2001年2月株式会社ハートウェル(現株式会社フロンティア)代表取締役社長、2005年日清医療食品株式会社代表取締役社長、2016年9月ワタキューセイモア株式会社代表取締役社長(現任)。


 

 

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